「なかなか横浜に来るのも難しくてね」
コロナ禍で、誰かと会う事が少なくなっている。
そしてその対応で忙しくなっているのに、飲食業は遅くまでの営業が難しくなった。
特にアルコールが悪者にされていて、
アメリカでの銃規制と似たようなイメージさえ感じる。
銃による問題について、銃には罪が無く撃つ人に問題がある・・の
銃を酒に換えてみたらわかるよね。
飲みたいのではなく騒ぎたいって人がかなり多いのだろう。
そんな飲み方をする人を寄せつけないのがオーセンティックなバーで、
「飲んでも酔うな」を暗黙のルールに大人の会話を楽しむ場として存在する。
だが、アルコールを売らせないという暴挙に出れば、
専ら酒を提供する店側は売り物が無くなってしまって商売が成り立たず、
ホテルのメインバーであるこのRAでも、緊急事態宣言発出時は閉めていた。
「ホント、飲みに行けなくてつまらないよね」
「自宅で飲んでも、なんか今ひとつなんだよね」
コロナ禍で会えなくなった人が、
たまたま横浜に来ていたので、仕事ぶん投げてのRA。
バーテンダーもスタッフも全員マスク着用って事だけが違ってて、
以前と同じ空気があった事には安堵したけど、
営業時間短縮で久しぶりの友人との時間が短くなるのは
やっぱりつまらない。
前の様に、終電が無くなる時間までの営業だと
22時に仕事が終わってからでも飲みに来やすいのにな・・と
心の中でない物ねだり。
それでもエッセンシャルワーカーな自分にとっては
バースタッフの苦労を考えると、頭が下がる思いでいっぱいになる。
「今日は泊まりだから、部屋で飲み直す?」
「そうしたいけど、明日もまた6時前には起きなくちゃ・・なのだよ」
「良いじゃん、ここから出勤すれば。」
そう言えば前は、
こんな申し出を断らなかったな、と気づく。
と言うか、店が早く閉まるなら、
その後の遊び方を考えて用意しておくのが当たり前で、
起きていられる限り遊ぶ事を考えていたっけ。
「いや、正直言うと、眠い」
「え?」
「現場にいた頃とは違う眠さで、
体力が落ちたのかもって思うけど」
「違うな。」
「うん?」
「酒、弱くなったと思うよ?」
「え?」
「前はさ、ジンとアイラの1:1とか平気でグイグイ飲んでたじゃん?
ポチーンの90度とかもストレートで飲んでたし」
「懐かしいね。
今ってポチーンって飲めるとこあるのかね」
「輸入してたアイリッシュパブは閉店したし、どうだろうね」
「え?閉店??」
「もう、随分前だと思ったな」
酒なら何でも飲むって時期があって、
自宅そばのバーでは、おおよそ誰も飲みそうにないリキュールまで
片っ端から飲み倒していた事を思い出した。
仕事終わりで呼ばれるままにバーに出かけ、
一通り飲んで分かれた後に、自宅そばのバーに顔を出す。
今日はこんな酒をこんだけ飲んできたけど
その後、何を飲めば良いかな?って相談して
一杯で帰るのは申し訳無いからと最低でも2杯は飲む。
そんな頃に出会ったポチーンはその存在を知る人も少なくて、
ネットにもあまり情報が無かったように記憶している。
ちなみにその頃飲んでいたポチーンは
アルコール度数の違いによって4種類あって、
40%~90%内でのラインナップだった。
度数が上がれば上がるほど、味わいは濃くなって美味しくなるのだが、
90%をストレートで飲むと(勿論すぐチェイサーも飲む)
ちょっと間があってからブワッと酔いが襲ってくる。
でも、その酔いは長続きしなくて、
10分もしないでスッと消えていくので、
そこでまたストレートでグイっと飲むワケだ。
人工的な青リンゴ風の風味があってかなり楽しいのだけど、
カスクストレングスのモルトをニートで飲む様な人じゃない限り、
ストレートはマジやばいって思ったっけね。
「次はまた来年かな」
「その頃には、もうちょっと状態が回復してると良いね」
「これからの冬でどうなるか・・だよね」
ポチーンは上品なRAには存在しないけど、
あの突如嵐の様に襲ってくる酔いを味わいたいと思ったのは
予期できない変化が起きている今に準えた気持ちの為せるワザ。
そう言えば、そんな店に出かける事も無くなって
何年経ったんだろうね。
ごちそうさまでした。
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