これは、物語や映画等の構成にも転化されていて、
映画の場合は、
「起」は説明
「承」は物語の展開
「転」はヤマ場
「結」はヤマ場を越えた後の結果
と説明されている。
しかし日本には
序破急という雅楽から出た概念があり、
「序」は説明（設定）
「破」は対立
「急」はヤマ場（解決）
という構成がなされている。
そんな事を思うのは、
ここのところ通っている料理店のコースを食べていて、
リズムと言うか構成と言うべきか、
メインに向けての様々な仕掛けが大事なのだな、
と感じさせられていたからだ。
イタリアンの４コースと言えば、
アンティパスト、プリモ、セコンド、ドルチェ。
セコンド・ピアットというヤマ場に向けて
どのような展開にするかが、カポの腕の見せどころと言っていい。
そしてその店の今月のコースは、
まさにその仕掛けが序破急のようで見事だと、
感心させられたからに他ならない。
＜ブロッコリーのムース アンチョビのクッキー＞
アンティの２皿目はブロッコリーだった。
ムースにするアイデアも面白いけど、
葉先の緑の部分は細かく切ってムースの上に乗せ、
ローストアーモンドとアンチョビのクッキーを砕いた物をふりかけてあり、
ムースの食感とクッキーのクリスピーな食感のハーモニーが面白い。
だけどどことなく平凡な味わいがあって、
あれっ？と思わされたのが正直なところ。
この店は８ディッシュコースになるので、
アンティ・プリモ・セコンドとも２皿構成となる。
そしてプリモの２皿目はコレだった。
＜牛蒡と粗挽き肉のカルボナーラ＞
プリモの１皿目はズワイガニとフレッシュトマトを使った
刺激的で芳醇なパスタ料理だったが、２皿目のカルボナーラは
スライスした牛蒡と挽肉を使った割にはアッサリとした物で、
全卵だけで作ったカルボナーラとしても拍子抜けする感じがあった。
ただ、これはこれで秀逸で、何よりも塩の使い方と
しつこくしないように仕上げるワザは素晴らしいもの。
カニの濃厚な味わいの後に食べたから、
素っ気ないまでの味わいに驚いたという事らしい。
＜鰤のソテー セロリのサラダ＞
セコンド・ピアットの１皿目は長崎産の鰤。
寒鰤が美味いのは当然としても、
脂が乗っている時期だからどうソテーしてくるのだろうと、
ちょっとワクワクして待っていた。
あれ？
そんなに脂っこくは無いよ？
でも、絶妙な火加減だね。
ソテーと言うよりはグリルに近い感じ。
そして鰤の皮が、見事なまでにカリカリに焼き上げてあって、
そのクリスピーな食感の楽しさが、余計にグリルっぽさを感じさせる。
セロリは存在感をひっそりとしているけど、
その爽やかな味わいが、この鰤にちょうど合っててかなり楽しい。
なるほど。
今日はセコンドにかなりの山を感じさせるために、
重さと軽さをリズムを刻むように仕掛けてきたようだ。
＜岩中豚・肩ロースのソテー 人参のピューレ＞
岩中豚は無菌豚とも言われるブランド豚で、
安心して赤さが残る焼き方の物でも楽しむ事ができる。
だからこの絶妙な加熱具合が、どのような味わいになるかが
皿を見た瞬間に、期待が込もった疑問として頭に浮かんだ。
あ・・・
凄いわ・・・・
今まで食べてきた料理の全てが、
この豚肉が持つ脂の旨味を際立たせるために仕組まれていた、と、
一口で納得させられる味わいになっていた。
肩ロースなのに、
この豊かで美味しい脂の多さ。
そして肉として旨味が脂に乗って同時に襲ってくる感じ。
いやぁ・・・・美味いわ(>_<)
なんかね。
ボクシング選手が言ってた事を思い出したよ。
試合中に、ずっと仕掛けて、
無意識に動きを強制して、空いた穴を一発で仕留める。
そのために、じっと耐えて時間をかけて、
自分までも騙すような感じでフェイントを見せつけるのだ・・と。
今日のコースは、
リズムが「序破急」だった。
「破」となるプリモは魅力的な食材ながらも
感情的な対立をちゃんと演出する形になっていて、
「先月のような盛り上がりは無いのかよ？」という気分にさせられて
「急」となるセコンドでは、見事にウィニングショットを投げ込まれ、
気持ちが離れていた分、余計に大きな驚きと感動を与えられてしまった。
強かなコース編成だね。
先月は、盛り上がりがどこまでも、という感じ。
先々月は、多彩な食感のハーモニーが、
口の中でオーケストラのようだった。
コストパフォーマンスが良すぎると今回も思わされたけど、
心はもう、来月のコース編成が楽しみでいっぱいになっている。
来月もまた楽しめるよう、
頑張って仕事しよう(^_^)
ごちそうさまでした。
「イル・ネッソ」
０４５－２６４－４９６９
横浜市中区元町４－１７９ ウィスタリア元町２F
12:00~14:00(LO)
18:00~21:00(LO)
月曜定休（日曜はランチ営業のみ）
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