2017年6月7日水曜日

横浜晋山で鴨せいろ

気付けば行きつけになってしまった「横浜晋山」
 
ここの更級そばとの出会いは衝撃的で、
今は無き「汐汲坂まつむら」が出した更級蕎麦の美味さを
凌駕する感動があった。
 
それまで、更級蕎麦と言えば
素麺みたいなふにゃふにゃで香りも無い蕎麦で、
むりやり濃い汁で食べるもの、というイメージを持っていた。

たまにある「二色そば」という更科と普通の蕎麦が同時出されるヤツを食べても、
永坂更級というブランドを掲げる店の更科を食べても、
更科そばの美味さを感じる事ができなかったからだ。

ところが、「汐汲坂まつむら」が開店した当初、
元町に新しい蕎麦屋ができたから・・と行ってみて、
勧められた更科蕎麦を半信半疑で食べて見て、驚いた。

ダメだろうと思ってた更科蕎麦には、香りも腰もしっかりあったからだ。

それはもう、目から鱗が落ちる気分。
だから更科蕎麦が食べたい時は「まつむら」に行く、というクセがついてしまった。
 
ただ、その素晴らしい更科蕎麦はいつの間にか輝きが鈍り、
店は石川町駅近くに移転してからは殆ど行く事も無くなって、
最後に訪れた時は、
店主は店内のテーブルに座って新聞を読みふけって客に関心を示さず、
弟子が蕎麦を打ち、店員がフロアを仕切る状況になっていた。
   
しかも、あの更科蕎麦は無かった。
 
他にいた客は酔っ払って騒がしく、店員は常連なのか、つきっきり。
そんな状況で蕎麦を食べてみても、美味しく感じるワケは無い。
 
で、実際、蕎麦は普通の蕎麦になっていた。
だからその後に「まつむら」に行く事はなくなり、
今年の春に閉店した事だけは伝え聞いた。
 
 
「更科蕎麦は、もともとは宮家や大名に献上する蕎麦で、
 食べさせてくれる店は、料理や酒を楽しんだ後のシメに出すものだったんですよ」
 
「鮨屋で言うところの高級店みたいなものですか?」
 
「町の蕎麦屋とは全然別の蕎麦屋ですね。
 上流階級が食べる物としての認識がありましたから高価でした。
 更科蕎麦を扱った堀井家は銀行を持つほどの資産を作ったようですが、
 昭和の恐慌あたりから傾いて、結果的に永坂更科や布屋太兵衛のブランドは
 取り上げられてしまったんですね」
 
「え? 永坂更科って、更科蕎麦を始めた人とは違う人が経営してるんですか?」
 
「そうなります。」
 
「なんか、布屋太兵衛の更科って好きになれなかったけど、
 そういう話を聞いちゃうと、なんとなく納得しちゃいますね。
 乾麺とか汁の缶詰とかを出してて商売上手だなぁ・・と思ってました。」
 
「更科は香りは弱いですけど甘みが出ます。
 星が入る並蕎麦とは別の魅力がありますね。」
 
 
晋山には、一人で食べる時にはありがたいカウンターがあって、
店主とそんな話をしながら酒を飲む事ができる。
 
「まつむら」で食べた更科よりも、もう少しプリッとしたような腰が強くあって、
しかも甘みは、明らかに多いと感じるのが「晋山」の更科。
 
オーダーを受けてから打つのは白い色が長持ちしないから、
と聞かされたけど、確かに目が覚めるような白さが印象的でもある。
 
 
  
  
「県民ホールの裏でやってた頃と随分変わった感じがありますけど、
 どう変えたんですか?」
  
 
酔っ払いは不躾で困るよね。
 
播州一献を2合ほど飲んじゃった勢いで、
酒のアテ代わりにオーダーした「鴨せいろ」を待ちつつ、
美味さの秘密を尋ねてみた。
 
 
「粉のグレードを上げて、ブレンドを変えましたね。
 あと、汁は凄く変えました。
 本返しなんですけど、かける時間を倍にしてます。」
 
「なんだか、蕎麦湯で頂くのが楽しくてつい飲み過ぎちゃうんですけど、
 優しい味は、そんなところからくるんですね。
 そう言えば並木藪は、随分辛さを抑えていました。」
 
「時代によって味も変化していきますからね」
 
 
好き嫌いで言うなら、並木藪の蕎麦より晋山の蕎麦の方が好きだけど、
並木藪には、あの逆反りざるの上に乗るほんの少しの蕎麦を、
ささっと一枚手繰ってすぐ店を出るスピードが楽しめるって魅力がある。
 
晋山は、絶品の更科蕎麦を、料理と酒を楽しんだ後に手繰る、という
更科蕎麦が供された店のスタイルを踏襲しているようにも感じた。
 
 
  
 
今日、頂いたのはコレ。
「鴨せいろ」(1,700円)
 
もうね、鴨の脂が楽しくて蕎麦も汁も実に良いバランスで、
酔っ払いには贅沢するぎる蕎麦だったっす(^_^)
 
 
ずっと不思議に思っていた、
蕎麦という文字を表さない店名。
 
和食屋かな?って思える店構えは、
更科蕎麦の修行を通じて歴史も学び、
新しい蕎麦屋の形を考えての命名だった。
 
この店がヤバイのは、
昼営業はしないで23時までやっていること。
 
22時の勤務が終わってからでも
絶品の蕎麦が食べられちゃうのが・・・ね(^_^;
 
ごちそうさまでした。
☆☆

横浜 晋山
 045-228-9479
 横浜市中区山下町106−16
 不定休
 営業時間 17:30〜23:00

0 件のコメント:

コメントを投稿

BUILD A BURGER

人混み嫌いではあるけど、 取材なので行ってみた「CP+2025」。         プロからアマのカメラファンにまでと門戸を広げたイベントなので、 一般客がいないプレスタイムに訪れたのに、それでもかなりの人出があってビックリ。         イベント内容はnoteに書い...