2017年11月27日月曜日

黒カツカレー

「この前、黒カレーの話してたじゃん?」
 
「風雅亭のね」
 
「本家の黒カレーって食べた事ある?」
 
「神保町の?」
 
「あ・・・知ってる?」

「う・・・ん」
 
「歯切れ悪いな。」
 
「名前を出したくない店もあるんだよ。」
 
「本当のお気に入りは、店名を出さないって?」
 
 
味の評価って、その時の自分の評価であって、
過去に美味しいと思った店の料理が、
今の自分にとって美味しいかは正直わからないのだ。
 
黒カレーに関しては、
絶対的に美味しいと言える店だから
「和田門」の名前を出したけど、それはそもそもコストからして違う。
(コスト高なら材料も良く、美味しいのが当然と言える)
 
でも、昭和35年に飯田橋で開業し、昭和38年には神保町へ移転したこの店、
創業者が南海ホークスが好きだった事から「キッチン南海」と名付け、
店の看板はチームカラーの緑、という街の洋食屋は、
元祖カツカレーと名乗る、知る人ぞ知る有名店でもある。
 
 
  
 
「知ってるんじゃ、つまらないな。」
 
「業界じゃ有名な店だよ。
 美味い、安い、量があるってね」
 
「で、どうよ、風雅亭に比べて?」
 
「別物だね。
 風雅亭は欧州カレー。南海は洋食屋のカレー。」
 
「言い切るね。」
 
「風雅亭の話書いた時思い出して、
 久々に行ってきたのさ」
  
   
  
 
神保町と言えば、今や古本とカレーの街(爆)
 
ボンディ、共栄堂、ガヴィアルとカレー好きなら行きたい店が
あちこちにあって、欧州カレーもインドカレーも洋食屋のカレーも参戦中。
 
でも、キッチン南海の黒カレーは、ありそうで無い独特の味わいがあるのだ。
 
 
  
 
「注文決まりました?」
 
「カツカレーに生卵トッピングで、御飯少なめを」
 
「はい」
 
 
基本、行列必至の店であり、
行列を仕切る女性が手際良く並んでる人から注文を取っていくのだが、
杉田にあった頃の吉村家のようだ・・と当時の事を思い出して、一人笑い(^_^;
 
結構並んでいるからどうしようか・・と思ったけど、
客は食べ終わったらすぐ出るという暗黙の了解があるのか
回転がかなり良く、行列しても待ち時間はそう長くなかった。
 
店内はL字カウンターと4人掛けテーブルが2つのシンプル&手狭な感じだが、
テーブルは問答無用で相席になっているようだ。
 
他の客が食べてるのを見ると、
カツカレー派と海老しょう(海老フライ&生姜焼き)ライス派がいる感じ。
 
そして、カツカレー&生卵がやってきた。
 
 
  
 
ね?
黒カレーでしょ?
 
生卵トッピングを頼むと、
ちょっと深さがある皿に盛ってくれる気遣いが嬉しい。
(普通のカレーはかなり薄めの平皿)
 
御飯少なめでオーダーしても普通の量があって、
その御飯が見えない大きさの豚カツがしっかり乗っている。
 
肉の厚みはそんなに厚くはないけど、
ちゃんとした豚肉で、カレーのかかってない所に
豚カツ用ソースをかけ、辛子をつけると、これがまた楽しい。
 
カレーは、
独特のスパイス使いがあって、味のバランスは良い。
ただ、甘みは弱いからか、ボディが薄い感じもあるんだが、
辛さはジワジワとやってくる感じがあって、
懐かしい洋食屋のカレーの王道を行ってる感じがある。
 
これで800円って、大丈夫か?
って味と量なんですな(カツカレー750円+生卵50円)
 
あ・・・
缶ビール300円ってのがあったじゃん?
 
でも、このスピードで食べてると、
ビールをゆっくりってイメージは無いなぁ・・・
 
 
「で、久々の南海はどうだった?」
 
「昔は辛いけど美味しいってイメージだったけど、
 今の感覚だと、スパイシーでソリッドなのに、理解不能な魅力がある
 って感じかな」
 
「何じゃそりゃ」
 
「最近、ウィークデイに休みがあったりするから
 ふらっとこういう店に行く事もできて、そういう意味では楽しいよ」
 
「週末行ったら大変かなぁ・・・」
 
「カレー屋多いし、餃子屋とかロシア料理店とかもあるし
 古い住宅みたいな喫茶店もあるから、行ってみれば楽しいと思うよ」
 
 
東京って、人が多いし交通も複雑だけど、
確かに魅力的な飲食店は多いし、
競争も激しいから、美味しくて安い店もかなり多い。
 
上野の昼飲みも楽しそうだし、新宿の思い出横町で飲んだくれるのも・・・
 
と思って気付く。
昭和な雰囲気を無意識に求めている自分に。
 
高度成長期に、
本物なんて知らずに必死に生きていた人達は、
明日を夢見て、安酒で勢いをつけて、走り続けた。
 
そんな時代だったからこそ、
紛い物やダイヤの原石が溢れていて、
それらは独特の魅力も持っていたんだと思う。
 
今の物って、綺麗で画一的で、
何でも同じ物にしか見えないからつまらない。

そういう意味で、
このカツカレーはオリジナルな魅力に溢れているって
思うのかも知れないね。
 
ごちそうさまでした。

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