2020年12月16日水曜日

ハングリータイガー

 
 
横浜でハンバーグと言えば「ハングリータイガー」がブランドだった。
 
だった・・と言うのは現在は当時の勢いが無いから。
リピーター率80%、店舗数は33店舗と記憶にあるが、とにかく半端ない人気があった。
 
熱々の鉄板の上に乗って出てくるハンバーグはラグビーボール状で、
客は髪ナプキンの半分をテーブルに乗せ、手前の端を両手で持ってスタンバイする。
 
スタッフがそのナプキンを壁の様に持ち上げるよう言いながら、
ハンバーグを半分に切ると中はまだ赤い状態の切り口を鉄板の上に倒す。
 
そこでジュワッと音が上がるが、メインイベントはその後。
たっぷりとハンバーグにソースをかけると一気に脂と蒸気が立ち上り、
肉汁が爆ぜて食欲がさらに増すワケだ。
 
店舗は駐車場付きのロードサイド型が多かったが、
ファミレスより高額な料金設定でも、上質な接客やコストパフォーマンスの良い
ハンバーグやステーキが食べられる事から、週末は順番待ちの客が並ぶほどの愛され方だった。
 
しかし、2000年2月、O157による食中毒が発生、
生焼けなハンバーグにはしっかり火を通すように指示が出され、
客としては好みの火加減が楽しめなくなった事を嘆きつつも、
まだまだ店は頑張れてはいたのだが・・・
 
例のBSE問題が勃発。
銀行からの融資も止まり、店舗数は3つにまで縮小となった。
 
 
「ハンマーヘッドにハングリータイガーあるの、知ってるよね?」
 
「知ってる。6月に行ってみたらメチャ混みで断念した。」
 
「そんなに混んでるんだ?」
 
「なんか、その日は『本日の予定客数終了』とかでふられた。」
 
「じゃ、今もダメかねぇ。」 
 
「行ってダメならミケーレってピッツェリアがあるから、
 そこでデカいマルゲリータでも食べれば良いじゃん。」
 
「ハンバーグの代わりにピッツァはなぁ・・・」
 
「じゃ、アメリカンフードのキーズって店でサーロインのグリルって手もある」
 
「そっちの方が気になるな。」
 
「んじゃ・・と16日ってどう?
 この日なら昼間から自由に動ける。」
 
「16は・・大丈夫だ。ランチでどう?」
 
「その方が空いてるかもね。」
 
 
 
 
ふられた恨みが無かったわけじゃないが、
予約してまで行くレベルの店じゃないと思ってて人気に驚かされ、
今のハングリータイガーがどうなってるかって興味が湧いていたのだ。
 
ハンバーグもステーキも自分好みの店をみつけてから冒険しなくなったけど、
冒険しない=老化って方程式もあるので、ここはまず確認が必要かも。
 
 
 
リブロースコンボ
 
  
「豪快にいったね。」
 
「いくでしょ。
 ステーキも楽しかったから、両方確認しないとね」
 
「それにしても、随分しっかりと押しつけたよね」
 
 
そう、ハンバーグの最終調理は客前で、なハングリータイガー。
スタッフが半分に切ったハンバーグを、これでもか・・とばかりに熱い鉄板に押しつけていたのだ。
 
それはやっぱり、二度と食中毒は起こしたくない、という意思の表れなのだろうけど、
それにしてもなぁ・・・と思ってしまった。
 
 
 
 
このハンバーグを食べる時は、スペシャルセット(スープもしくはサラダ、
パンもしくはライス、飲み物)で頼むようにしている。
 
 
 
 
チョイスはサラダ&パン。
と言うのも、サラダのレタスとバンズ型のパンでハンバーグの半分を挟んで、
簡易型ハンバーガーを楽しみたいからに他ならない。
 
あ?
この店、レギュラーメニューにハンバーガーあるじゃん??
 
昔は一時期の本店にしかなかったハンバーガーだが、クォーターポンドのハンバーガーが
メニューにしっかりと載っているのだ。
 
でも、ソースがサウザンアイランドソースっぽい風情なので、
ここは初心貫徹でいこうかね。
 
あ・・・
ガチガチに火が通ってるじゃん・・・
 
う〜む、こんな味わいだったっけかね。
 
 
「こんなだったかな。」
 
「今、俺もそう思った。
 これ、火を通しすぎだよね。」
 
「って言うか、固いわ」
 
「なんか残念だな」
 

 
リブロースもしっかりと加熱されていた。
と言うか、鉄板で熱せられて火が入りすぎたのかも知れない。
 
 
「どう?ステーキは??」
 
「まぁ、コストなりの味わいだね。
 固いけど、アメリカ的なステーキで嫌いじゃない」
 
「サーロインとかを頼めば良かったんじゃ?」
 
「いやいや、ハンバーグを確認したかったからさ。
 ステーキメニューだとヒレとサーロインがメインだしヤングスターって多分ランプ、
 Tボーンは君を巻き込まないと食い切れないしね」
 
「リブロースって柔らかいんじゃなかったっけ?」
 
「本来はステーキ用に適した美味い肉なんだけど、
 日本ではサーロインより下に見られる事が多いと思う。
 で、柔らかいはずなのに固いのは、焼きすぎなんだな。
 こんなに脂が出てきちゃうほど加熱したらねぇ・・・」
 
「ハングリータイガーは、加熱不足で潰れそうになったから、
 そこはちゃんと加熱するってスタイルを守るんだろうね」
 
 
久しぶりのハングリータイガー、
O157&BSEの後遺症は大きかった。
 
そして、庶民のちょっとした贅沢を演出するだけのクオリティは
ちゃんと残っていたから、この盛況があるのだろう。
 
でも、わざわざハンマーヘッドまで来てハングリータイガーで食べる?
って質問されれば、「気分次第」と答えるしかない。
 
だってさ、アメリカンなステーキならミッドタウンやケーブルカーで食べた方が楽しいし、
コストパフォーマンスだって優れてるし、ハンバーガーなら横浜にはプレミアムな
ハンバーガーを出す店が多くある。
 
ちなみに、今日の私製ハンバーガーはこんな感じ↓
 
 
 
家庭的なハンバーグならセブンの金のハンバーグの方が楽しいし、
美味いハンバーグならステーキ屋の物の方が・・・・
 
と言う事で、
思い出というスパイスの効いたハンバーグ、
楽しくも寂しくも感じつつ、
焼きすぎなかった時代のハングリータイガーが懐かしいって思いました。
 
ごちそうさまでした。

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