今月28日で営業終了となるので、予約できたら・・と覗いてみた。
誰も並んでないじゃん?
余裕??
あ・・・
満員なのですか。
17時オープンなので17時過ぎに来たんだけど、
もうすでにアウト?
・・と立ち尽くしていたら、
しばらくして店の人が出てきた。
「毎日、オープン前から並んで、
ずっと満席なんです。スイマセン」
「大変なんですね。」
「今月、ずっとこうで、予約も受けられません」
「遅くに席が空いたりしますか?」
「ひょっとしたら演奏終わった21時過ぎに空くかもしれませんが、
わかりません」
なんだか、悲惨な状態だけは伝わってきた。
今日は入る気は無かったけど、来週は開店前に来て並んでみようかね。
とは言え、17時過ぎって中途半端な時間だな。
となれば姉妹店の「ケーブルカー」へ行ってみるかな。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
「ギネスをパイントで。
フードってまだですよね?」
「18時過ぎからになります」
「じゃぁ、ゆっくり飲んで待ちますね。
ところで『ウィンドジャマー』閉まるんですね?」
「そう聞いています」
「姉妹店ではなかったでしたっけ?」
「いえ、今は関係は無くなっています」
ケーブルカーは当時のチーフバーテンダーが引き継いで、
今は独自経営なのだとか。
そんな話をしている所へ、カップル客が入ってきた。
不思議な事なんだけど、私が空いている店に入ると
何故か客を呼んでしまう・というパターンが凄く多い。
今日も、客引いたなって思っているところへ、
さらに女性グループが入ってきた。
とは言え、ウィークデイの17時過ぎ。
いきなり飲む客はそう多く無いはずだ。
「フード、頼まれますか?」
「えぇ、ステーキを300グラムで」
「ちょっとお時間頂きますね」
「はい、それとギネスの後に『ジャックター』を」
「ジャック・ター」は「ウィンドジャマー」発祥のオリジナルカクテル。
ロンリコ151とサザンカンフォート、ライムジュースを合わせてシェイクし
クラッシュドアイスを入れたオールドファッションドグラスに注ぐ。
飲みやすいが、ロンリコ151だからアルコール度数はかなり高い。
だけど今日は「ウィンドジャマー」にちなんで飲みたいと思ってしまったのだ。
あ〜〜、やっぱ美味いわ〜〜
これって151じゃないと出ない味なんだよなぁ・・・
なんか、久々に飲んだら「イエローマン」も飲みたくなってきた。
イエローマンは151とグレープフルーツジュースが1対1だから現実的には
「ジャック・ター」より強いんだよねぇ・・・
とは言え、カスクストレングスのモルトをストレートで飲んでる自分としては、
アルコール耐性的には問題無い。
だけど、酒で酔うのはアルコールよりも材料のエキスによる部分が大きくて、
米・今・黒糖・麦・ジャガイモ・葡萄・サトウキビ・リュウゼツラン・・・など
その原材料で酔う酔わないが左右される。
来た〜
ステーキ300グラム!
相変わらずコストパフォーマンスが良いね。
だけど今日は、ちょっと肉質が好みじゃないかも。
でも、幸せだ〜〜〜〜
(ちょっと回ってますな)
「5人なんだけど入れる?」
「カウンターでよろしければ」
「おっけ〜
ねぇ〜〜入れるってぇ!!」
なんか、騒がしい女子が2名入ってきて、
不穏な気配が漂う。
すると、オッサン1人と女子2名が続いて入ってきた。
なんか不思議なグループだ。
女子4人は何となくグループな感じでそれなりにお洒落をしているけど、
入ってきたオッサンは休日のゴルファーの様なスタイルで女子達とは
年齢的に釣り合わない。
会社のグループにしてはオッサンと女子との距離が近いなぁ・・・
「ね、良いでしょ、両手に花で!」
とオッサン、バーテンダーに話しかける。
きゃはは!と叫んだような大きさで女子達が笑い、
シットリとした空気が流れていた店内は、途端に下衆な空気に染まっていく。
「このハンバーガーさ、4つに切れない?」
「切っても半分までですね」
「じゃ、いいわ。
フレンチフライにしようかな。
お前達食べるよな?」
「食べる〜〜」
「あと、ブラントンある?」
「ございます」
「じゃ、それ、ソーダ割りで」
とにかく騒いでオッサンの気持ちを良くしたいだろう女子達は、
必要以上に大きな声で喋って笑ってな乱行だった。
ステーキ食ってなかったら即座に出るところだが、
今は食欲に負ける自分がいる。
エアポッズプロを使ってノイズキャンセラーかけるかなって思いつつ、
バーテンダーの動きを見ていた。
「ケーブルカー」はオーセンティックなバーでは無いけど、
老舗でそれなりに格式あるカウンターバー。
だから、同伴客でも大人しく飲んでいるのが当たり前だし、
その空気の心地良さこそが魅力でもある。
そんな店に入った一見客がバーの持つ空気を無視し、
自分専用のエリアの如くに振る舞えば、店が客を制するかどうかを客は見る。
制さないのなら、場合によっては二度と来ない店として認定され、
店も常連を失う事にも繋がるので、ある意味店も試される事となる。
・・と、店内の冷ややかな空気に気づいたのだろうか。
一杯しか飲まず、一皿のフライドポテトを女子全員に食べさせると、
オッサンは突然言い放った。
「焼売食べに行こうよ。
崎陽軒の焼売」
「いいね!崎陽軒の焼売、好き!」
「じゃ、ポテト食べたら行こうね」
「崎陽軒、行こう!」
多分、同席した人達全員、
下を向いて笑ってたと思う。
崎陽軒は弁当屋で、飲食店では無い。
飲食スペースがあるメインストリート端の店でも
ケーブルカーの1/4の奥行も無いカウンターか2人掛けのテーブルしかない。
そして置いてあるのは弁当に使うアレやその派生商品だから・・・
貧しいわ、ホント。
中華街に来て焼売が食べたいなら、
ちゃんとした飲食店でマトモな焼売を食べれば良いのに、
女子達にそんな提案もしないって、どんだけオッサン駄目駄目なんだろう。
ただ、バーで1杯しか飲まないのは
「2度と来ない」というメッセージになる。
そんな意味を知ってて出ていくのなら、
店と他の客の冷ややかな目線に対する精一杯の虚勢、だったのかも知れない。
いずれにせよ、嵐が通り過ぎたのは嬉しい。
静かになった空気を味わうために
アドベックのコリーブレッカンをオーダーした。
さっきの嵐よりも強い鬼婆の息(コリーブレッカン)を楽しめば、
より静けさを楽しく味わえるに違いないからね。
やっと、ゆっくり飲めそうだ。
バーの空気は客を選び、客は空気を選んで店を決める。
そんな「暗黙の了解」の上で、
一見客も常連と同様に空気も含めた味わいを楽しめるのだ。
だからこそ、1人で入る知らない店が面白い。
店との関係をどう作っていくかを考えながら、
店の流儀を探りつつ、客としてのワガママを通していくだけじゃなく、
コストやローカルルールの重さを知って合わせていくのが、楽しい。
そしてそれが、酒飲みの遊びなんだと思ってるので、
バーに誘う友人は少ない方が良いと思うし、異性なら1人が限度だと思う。
誰かに気遣いながら店とのやり取りができるほど、
器用な人間じゃないから、そう思うんだろう。
・・と言う事で、色々盛りだくさんに酔いましたので、帰ります。
ごちそうさまでした。
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