2023年7月21日金曜日

横浜晋山で鱧の柳川とか

何度食べても、よくわからないのが「蕎麦の美味さ」。
 
いや、美味いって事はわかっては、いる。
ただ、美味い不味いの区別はつくけど「これが美味い」って思える明確な「味」が
未だによくわかってない、のだ。
 
自分なりの解釈だと「主食」として食べるものに共通する感覚で、
それだけだと「不味い」って思っても副菜と一緒に食べると楽しめるといった
「主食ならではの味わい」だから、わからないのだろう。
 
蕎麦は好きだけど、蕎麦のどこが好きか?って言われれば、
蕎麦単体じゃなくて汁や薬味、かやくなどの総合的な味わいが好きってだけで、
蕎麦その物が美味しくて好きだ・・とは言えない。
 
そんな味覚は、高度成長期に育った事で培われてしまったのだ、と思っている。
子供の頃は、とにかく「毎日食べられる事を感謝しろ」と親に言われ続け、
実際ギリギリの食生活であったのだと、今はわかる。
 
家で食べる米は一番安い物で、それだけで美味しいとは感じなかったけど、
ふりかけやマヨネーズなんかをかけて食べるのが楽しかったっけ。
 
だから「蕎麦その物が美味い」って感じられるようになれたのは、
「蕎麦本来の味わいは?」って疑問を持って食べるようになれてからだし、
良い蕎麦に出会うチャンスも多くなってきたから、だと思う。
 
 
 
 
赤茄子の煮浸しをアテに飲むのは「うごのつき」純米吟醸。
 
横浜晋山にある酒は女将のチョイスだと思うけどかなりマニアックで、
あったら飲んでみたい、と思わせるレアなものがコソッと用意されていたりする。
 
 
「あの『桃源邨』が立ち飲み系の店に変わるって、知ってます?」
 
「え?ローズホテル前の?」
 
「そうです。
 『のり蔵』のある通りにもスタンディングバーができるとかで
 最近の中華街、新しい店が増えてきましたね・・・」
 
 
カウンターで飲んでいると、女将が最新の中華街情報を教えてくれたりして楽しい。
で、こちらはそんな話を聞いたらチェックしに行くってのもパターン。
勿論、気に入ったら報告する・・・というのがお約束だけど、
カウンターで食べる楽しみの一つは、食にまつわる様々な話だと思ってる。
 
晋山に集う客はコロナ禍を経てほぼ常連になってしまった事もあってか、
「味の好み」が似ていて行く店も被る事が多いのだとか。
 
たしかにこの店は蕎麦屋とはちょっと違うスタンスの店で、
上質な小料理と酒を楽しんで、最後に絶品の蕎麦を食べるのがお決まりだから、
安いアテで酒を楽しみつつ最後に蕎麦を手繰りたい客にとっては、
馴染みにくいのだろう。
 
ただ、昔ながらの蕎麦屋での昼呑みは格別の楽しさで、
居心地の良い蕎麦屋が近所にあったら昼呑みに通いたい。
 
でも、最近の街の蕎麦屋は妙に格上げを狙う傾向が強く、
昼呑みに適した午後にアイドルタイムを取ったり、
高級居酒屋な気配をまき散らしてお通し代を取ったりするから、
知ってる店以外は行かなくなった。
 
五割蕎麦で昼呑みできるチェーンな蕎麦屋の方が
よっぽど蕎麦屋らしくて良いって思うのは、何故なんだろうね。
 
 
 
 
「鱧の柳川」があったので頼んでみた。
酒は「鍋島」特別純米に変更。
 
このクソ暑いのに柳川って・・・と思うけど、
大将の料理はかなり面白いのと鱧を使うというチャレンジに
興味津々で頼んでしまった。
 
あ〜〜〜
これは楽しいぞ〜〜〜
 
既に酔っ払いっす。
 
酒は一合を頼んでも女将が思いっ切り片口に入れてくれるので
「これって一合以上あるよね?」って思いつつの飲酒となる。
 
なので、二合も飲んだら出来上がっちゃうんですな。
 
 
「今日、お蕎麦はどうします?」
 
「疲れ気味なんで『つけとろ』を」
 
 
蕎麦の楽しさって、「かやく」(具)とのコンビネーションもあるよね。
蕎麦だけを味わう「もり」とは別の楽しさだけど。
 
「もり」と言えば「死ぬ前に一度、汁にドップリ蕎麦を浸けて食べたい」って
落語のマクラがあった。
 
南新二が作ったといわれるその小咄は、大して辛くもない汁なのに格好つけて
ちょっとだけ汁を浸けて啜る蕎麦っ食いを揶揄したようにもとれて、
有名な話になってしまったのだと思う。
 
夏目漱石は「吾輩は猫である」の中で「蕎麦は噛まずに飲み込め」と書いていて、
喉越しこそが蕎麦の味だと表明しているけど、それもどうかと思うんだな。
 
実のところ、タップリと汁に浸けて食べないと美味しくない蕎麦の方が多いのは事実で、
そんな蕎麦を出す店の汁は大して辛くなく、浸けこむ事を前提での味になっている。
 
でも、蕎麦を手繰る時にちょっとだけ浸けて啜ると、確かに蕎麦本来の味はわかりやすい。
鼻が鈍い私でも、香り高い蕎麦なら「お?」って思ったりもする。
 
逆に「並木藪」くらい辛い汁を用意する店だったら、
まだ水が滴っているような出たての蕎麦にちょこっとだけ汁を浸けて、
その水ごと啜る(これ大事)と、口の中でちょうど良い辛さになって楽しいのだ。
 
ただ、そんな辛い汁を出す店って、そうそう無いんだよなぁ・・・
 
 
 
 
晋山の並蕎麦は十割。
 
つけとろなのでとろろの上に汁を注ぎ、
その汁の部分にちょこっとだけ蕎麦を浸けて啜るのが最初の一口。
 
いや〜
何て言うか、ホッとする味なんだわ。
十割だけど歯ごたえは強めの蕎麦は香り高く、どこか甘いんだな。
 
蕎麦だけを味わった後、とろろと汁を混ぜて浸けて食べるけど、薬味は入れない。
その味わいを堪能したら味変で山葵を乗せたりするけど、それも気分次第。
 
蕎麦の味わいには山葵の個性も邪魔だと思うし、
葱なんて入れたらもう・・・ねぇ(^_^;
 
この蕎麦が凄く美味しいと思ってるワケじゃないんだけど、
他の店で食べるとこの味に届かない事が多く、
結局この蕎麦が欲しくなるんだから。自分にとっての「最上の蕎麦」なのだろう。
 
そう言えば随分と石川町の「木の芽」へ行ってない。
石川町へ行くと「鴻」へ行ったり「セントラルバーガーショップ」が気になったりして
ついあの店を通過してしまう。
 
なんか思い出したら、行きたくなってきた。
「冷やし焼き玉子蕎麦」が恋しいかも。
 
ごちそうさまでした。

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