2008年4月に香港路にできたお店は揚州飯店の総料理長がオーナーで、
台湾系の料理を出すコストパフォーマンスに優れた店としてすぐに知れ渡った。
だが、1年も経たないうちに閉店。
台湾系料理店は難しいのか?・・・と思ったのは中華街の黒歴史を知っていたからだけど、
人手不足で閉めざるを得なかったと聞いて、少しだけホッとした。
横浜在住者なら知っている人もいると思うけど、
中華街には大陸系と台湾系との対立があり両者の争いは子供達にまでも及んで、
子供の喧嘩も大陸系と台湾系との戦いになる等、中々に恐い時代もあったのだ。
(中華街の裏道に行くなら、覚悟して行けと言われていた)
実際、一見すると大陸系か台湾系かわからない店も結構あって、
台湾料理専門店は少なかったのだけど、それも時代の流れによって増えていく。
それは、1993年に両者を繋げていく「街づくり」協議会が結成され、
大陸系と台湾系に分裂していた中華街が徐々に一本化される方向に動きだした事も、
大きく作用しているのだと思う。
自分が仕事で取材していた頃は、大陸系と台湾系両方に声をかけないとトラブったが、
今は取材などでも「横浜中華街発展会」が窓口として機能してくれているらしい。
コロナ禍前までは中華街の飲食店は大陸系の店が多かったが、
今は「食べ放題」と「占い」、そして「食べ歩き用料理」の販売店が増え、
老舗と言われる料理店も店先に「食べ歩き用料理」の販売コーナーを持つようになった。
それは1980年代と同様に新たなニューカマーが増え、
横浜中華街らしさを意識しない商売優先な戦略で台頭する店がコロナを乗りきって、
世代交代のタイミングで店舗数を増やしていったからだろうと想像する。
勿論、ニューカマーの多くは発展会に入り、
同じ地域で商売するものとして協力しながら営業しているのだろうけど、
生きてきた社会が違う事から起きる軋轢は色々と聞こえてくる。
でも、消費者側から見れば、
リアルな現地の味わいが見えてくるニューカマーの店も楽しく、
安価に食べられる楽しさを否定するつもりもなくて、
上手く棲み分けて共存して欲しいと望むばかりだったりする。
大陸系と台湾系の軋轢が弱くなったと感じるのは、
店に台湾の旗が見える装飾がされている店が増えたこと。
と同時に、台湾料理専門の店も増えていて、
自分としてはかなり嬉しく思っている。
「許厨房」は香港路の店を畳んで2014年2022年8月末に上海路へ移転。
リーズナブルで美味いランチ、それも魚を1尾蒸した魚ランチを出す珍しい店は、
またもや人気店となって、知る人ぞ知る店として名を馳せる。
ただ、その上海路は何故かあまり長続きする飲食店が少ない通りで、
「菜香新館」が頑張り「謝甜記貮号店」が人を呼び・・と徐々に賑わいが出ても、
開店した店がすぐ閉店してしまう事が多かった。
その理由として考えられるのは、他の道に比べて広い事から殺風景に見える事や
車が通りやすい事から駐車場があったり、古くからの理髪店や喫茶店、寿司屋など
中華料理を楽しめる店が少なかったってのもあるのだろう。
自分としては、食べ歩き(座り&立ち食い)客が増えてくる前から、
あの広い道の真ん中に長いテーブルを置いたり屋台を連ねたら、
その先にある山下町小公園にまで続く楽しいエリアになると考えたんだけどね。
「今日のランチはこちらです」
とメニューを出してくれたのはオーナーの息子さん。
この店が再開できたのは修行を終えた息子さんが帰ってきたから、
との事だけど、人懐こい彼は長野からやってきた客に以前の中華街情報を
面白おかしく話したりして、妙に居心地の良い空気を演出していた。
この店に行けてなかったのには理由がある。
美味しい料理が安価であるが故の人気店でしかも狭い、
という事からランチタイムは行列ができやすい。
だから寄ってみてもその行列を見て避けてしまう、という悪循環にハマっていたワケだ。
「ランチ以外でしたら、魯肉飯セットや牛バラ麺もありますよ。」
「皿ワンタンって、量はどれくらいになりますか?」
「ワンタンは8個ですけど、1人で何皿も食べる人、いらっしゃいます。
ペロッと食べられると思いますよ」
「じゃ、それと瓶ビールを。
あとは、牛バラ煮込み刀削麺をお願いします。」
「パクチー大丈夫ですか?」
「もちろん!」
パクチーだね、確かに(^_^;
あ・・・
これ、美味い!
スルッと食べられて、単体で食べても美味いし白銀ネギとパクチーを乗せて食べると
また違った味わいで美味い!!
もちろん、ビールに合う!!!
ただ、ビールはスーパードライだった。
HPのメニューにはモルツってあったんだけどなぁ・・・
でも、確かにこれだと1人で何皿も食べるってのが、わかるわ。
ワンタンの皮はフワッとした舌触りがあって、汁雲呑と同じ食感が楽しめるね。
今度来る時は、皿ワンタン+水餃子+カニ玉ってセットでビールにしよう。
勿論、ビールは銘柄を聞いてからオーダーするけどね。
「今はそんな事無いですけど、子供の頃は学校帰りに囲まれて
ボコボコにされるってくらい乱暴な町だったんですよ・・」
「台湾と中国の関係で?」
「そうですね。
日本の政治家が煽ったりしてますけど、
中国と台湾の関係は今のままで良いと思うんです。
上手く共存できてきたのですからね」
長野からわざわざこの店を目指してきた客は、
各地の中華街へ訪れているようで、日本では横浜中華街が一番だと言う。
「私はNYにも行ってきましたけど、どこからどこが中華街かわかりませんでした」
「大きさとしてはアメリカで一番大きいと聞きますね」
NYか・・・
SFのチャイナタウンには行った事があるけど、
そんなに大きく感じなかったな・・・
横浜中華街は世界一の規模と言われているけど、
このサイズでそう言われるなら、大した事が無いのかな?
そんな事をつらつらと考えつつビールを飲んでいたら
「牛バラ煮込み刀削麺」が登場した。
お〜〜
この香り、まさしく台湾系!
美味い!
スープの味付けは穏やかだけど、ちょっとかけてある辣油がピリ辛をアクセントに加え、
牛バラは柔らかく麺は独特のモチモチ感があって、かなり楽しい。
麺は台湾から入れている乾麺と言うけど、
刀削麺らしい形をしながら長い状態なので、店で種を削って茹でる物とは
根本的に作り方が違うのだろう。
これは、ヤバいわ。
この前食べた「愛群」の「牛腩湯麺」と比べたらどっちが美味い?
って質問されたら、「どっちが好きか・・でしょ?」と答えるくらいに
この「牛バラ煮込み刀削麺」は魅力的。
しかも全般的に安価な設定だから、ここが人気店になるのは当然の流れだね。
グルメ系な情報番組なんかに取り上げられたら、
「南粤美食」と同じパターンに陥りそうで恐いなぁ・・・
あっちは「失われた香港の味わい」だけど、
こっちはハマったらヤバい「台湾の味わい」だから客を選ぶかな。
入れなくなる前に通うかなぁ・・・なんて思いつつも、
今日は開店15分前に来てギリギリ入れたくらいなので、
既に入店が難しい店にはなっているのも事実。
でも、リタイヤして時間が自由になるからこそ
こういう店にも行けるのだから、今の状況に感謝しかない。
さて、中華街でも撮影しに動きますかね。
ごちそうさまでした。
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